こんにちは。今回は
  • 「制定しよう 放射能汚染防止法」(山本行雄著、星雲社)
  • 「第1章 総理! 逃げた後はどうなりますか」
  • 「1‐03放射能汚染 公害・環境関係法律の適用除外」
  • についてお話してみたいと思います。原発の災害や被害についてかかわりのある法律の基本的なお話です。
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    三つの法律分野

    まずこの表の説明です。原発の被害や災害がかかわる法律分野は
  • 安全対策
  • 防災対策
  • 公害対策
  • の三つあり、それぞれの中心となるのが
  • 原子力基本法
  • 災害対策基本法
  • 環境基本法
  • という事になります。

    環境基本法第13条

    ところが公害対策分野では旧公害対策基本法制定以来、福島第一原発の事故に至るまで放射性物質はその適用が除外されていました。つまり、
  • 環境基本法第13条
  • “放射性物質による大気の汚染、水質の汚濁、及び土壌の汚染のための措置については、原子力基本法(昭和30年法律第186号)その他の関係法律の定めるところによる。”
  • を根拠に、環境基本法では放射性物質によるそれらの措置については扱わない、という事が明記されていたという事になります。×はそういう意味です。したがってこのブログの2回目の記事の中でお話した通り、
  • 大気汚染法
  • 水質汚濁防止法
  • 農用地汚染防止法
  • 土壌汚染対策法
  • やその他の公害や環境に関する法律でも放射性物質は扱われていなかったことになります。

    産業を振興する法律

    ではどの法律が扱っていたかというと
  • 原子力基本法
  • その関係法律
  • 原子力災害特措法
  • という事になるのですが、それでは
  • 原子力基本法
  • とはどんな法律なのかというと、それはこの法律の第1条に明記されています。すなわち、
  • 原子力基本法第1条
  •  「この法律は、原子力の研究、開発及び利用(以下「原子力利用」という。)を推進することによって、将来におけるエネルギー資源を確保し、学術の進歩と産業の振興とを図り、もって人類社会の福祉と国民生活の向上とに寄与することを目的とする。」ということです。つまり
  • 原子力基本法
  • 産業振興のための法律
  • ということであり、そのことについて冒頭ではっきりと示されている、というわけです。

    産業を規制する法律

    いっぽう
  • 環境基本法
  • はどういう法律かというと、
  • “産業活動がもたらした深刻な公害被害から、人の健康や環境を守るために、産業を規制する法律”
  • であり、公害の定義規定については条文にこのようにあります。すなわち、
  • 環境基本法第2条第3項
  • 『この法律において「公害」とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることをいう。』(条文のカッコ書き部分は省略)そしてそれを図解で示したものがこちらです。
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    国民の力でつくった法律と国策でつくった法律

    この二つの法律体系は、立法目的・性格の違いでだけでなく生成過程も対照的だと本は続けます。
  • 旧公害対策基本法とその関係法
  • は国民が反公害を運動を推し進め抵抗する産業界や行政の壁を乗り越えて国会を動かしてつくった法律であり、
  • 原子力基本法とその関係法
  • は原子力利用を国策として導入するために制定された法律であるというのです。かたや人権を守るため国民が自発的に生み出した法体系、かたや国指導で形成された法体系という稀有で対照的なふたつの法体系の矛盾が、原発の過酷事故を契機に噴出していると、この本は問題提起をしています。