こんにちは。今回は
  • 「制定しよう 放射能汚染防止法」(山本行雄著、星雲社)
  • 「第6章 福島第一原発事故 原子力公害被害者の権利」
  • 「6‐01 国には原子力公害被害者を救済する二重の責任がある」
  • についてお話してみたいと思います。発生した原子力公害における公害被害者に対する国の責任のお話です。


    1.環境基本法に基づく公害被害者救済責任


    環境基本法の改正の意味について最初に押えておきたい簡単で重要な点です。

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  • ①国の基本的責務(環境基本法6条)
    「環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する」と定めています。国は、公害から人や環境を守るための施策を策定する責任があります。

  • ②人の健康と生活環境が保全されるように実施する責任(環境基本法14条)
  • 「人の健康保護」「生活環境の保全」は、旧公害対策基本法第1条の目的規定を継承したものです。

  • ③被害者救済措置の責任(環境基本法31条2項)
  • 「国は、公害に係る被害の救済のための措置の円滑な実施を図るため、必要な措置を講じなければならない。」公害被害の救済措置は広範囲に及び、放射能汚染被害については、その被害の特性に応じて「必要な措置」を制度的に保障しなければなりません。

  • ④法制上財政上の措置責任(環境基本法11条)
  • 「政府は、環境の保全に関する施策を実施するために必要な法制上又は財務上その他の措置を講じなければならない。」と定めています。環境の保全に関する施策(公害対策を含む)に必要な法案提出や具体的な政策実施という政府の責任です。

  • ⑤生活権の確保に基礎を置いて施策を実施する責任(環境基本法1条及び憲法25条)
  • 環境基本法1条は、国が、これらの施策を行わなければならない理由について「国民の健康で文化的な生活の確保」としています。これは憲法25条が保障する生存権の事です。憲法25条は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」としています。

    このように、放射性物質が法律上公害原因物質に位置付けられたという事は、法整備は一から始まるのではないことを意味しています。


    2.国策として原発を推進してきた加害者責任

  • 福島復興再生特別措置法第1条
  • 「この法律は、これまで原子力災害により深刻かつ多大な被害を受けた福島の復興及び再生が、その置かれた特殊な諸事情と原子力政策を推進してきたことに伴う国の社会的責任を踏まえて行われるべきものであることに鑑み」(略)

  • 汚染対処措置法第1条
  • 「国は、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的責任を負っていることに鑑み、事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関し、必要な措置を講ずるものとする。」

    ※下線は管理者

    この「社会的責任」は、立法に際し、国の責任に触れないわけにはいかないものの、国の法的責任が及ばないように「法的責任ではない社会的責任」の意味で入れられた可能性があります。

    しかし、公害という法的観点から見れば、それはまさに加害者責任です。法整備運動の手掛かりになります。