こんにちは。今回は
  • 「制定しよう 放射能汚染防止法」(山本行雄著、星雲社)
  • の「資料4 環境基本法改正に伴う当面必要な法整備案骨子」
    を引用します。

  • 「原自連(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟。会長 吉原毅)」
  • が1月10日に記者会見を開き、
  • 「原発ゼロ・自然エネルギー基本法案」
  • を明らかにし、また、
  • 立憲民主党「エネルギー調査会」(会長・逢坂誠二衆院議員)
  • が原発ゼロの実現に向けた基本法案を3月をめどに国会提出を予定するなど、放射能汚染防止法制定と非常に関連の強いと思われる動きが活発になっています。

    そこで本の中で紹介されている
  • 環境基本法改正に伴う当面必要な法整備案骨子
  • をご案内しておこうと思います。

    ここから本文。

    前注:試案段階のものです。よりよい案に期待します。国などに要求する場合、ここにあるような体系的な内容の要求から始めるよりも、本文にあるように、総量規制、大気汚染防止法や水質汚濁防止法の規制基準・環境基準、刑事罰の整備のように、具体的な課題に的を絞った方が実践的でしょう。差し迫った問題として、法整備無しに再稼働が許されるのかという問題があります。資料3の知事への質問のような課題に優先して取り組んでいきましょう。

    1.法整備の基本概念

    1-01 公害法としての一元的法整備をする。
     放射性物質に対する公害関係法の整備は、原子力基本法以下の法体系と峻別し公害規制の基本法である環境基本法以下の法体系の下に一元的に整備すること。特に環境基準や規制基準を原子炉等規制法その他の原子力関係法の定める基準を使用しないし代用しないこと。

    1-02 放射性物質と非放射性物質は峻別して扱うこと。

    1-03 放射性物質は集約管理し、環境への拡散・希釈は原則的に行わないこと。やむなく拡散・希釈する場合も厳格な排出口における総量規制を前提とすること。

    1-04汚染者、原因者負担の原則を明記すること。

    2.国会と行政の組織と役割

    2-01 国会に放射性物質による公害を防止するための法整備及び政策を審議するための特別委員会を設置すること。
    2-02 環境省に放射能汚染を公害として扱う部門を整備し、産業振興法である原子力基本法以下の法令に基づく行政から独立して行政を行うこと。

    3、放射能汚染に対する公害規制法の基本的構造

    3-01 環境基本法13条の削除に伴い、全ての公害・環境法の放射性物質適用除外規定を削除し、原子力基本法体系とは峻別した公害・環境法の体系として放射性物質の特性に応じた法整備をすること。

    3-02 大気汚染防止法、水質汚濁防止法における送総量排出規制を柱とする法整備を行うとともに、それとの整合性のある土壌汚染防止法を整備し、更に、それらの法整備の上に環境評価法その他の法律を整備すること。放射性物質の混合処理は行わず、放射性物質とその他の廃棄物は峻別して扱うこと。区分は従来のクリアランスレベルによること。

    3-03 放射性物質の排出規制は排出口における総量規制を基本にすること。総量規制のない拡散・希釈による濃度規制や線量規制という方法は採らないこと。

    3-04 環境基準、規制基準、常時監視、罰則の他、情報公開、情報隠蔽の規制、住民、自治体の権限などを内容とする総合的、体系的な法整備をすること。

    3-05 環境基本法による環境基準、大気汚染防止法及び水質汚濁防止法による規制基準は、現行原子力発電所の年間放出管理目標値の数値と同一の数値を基礎とし、測定期間を短くし核種ごとに詳細を定め、セシウムなど通常運転では漏洩しないはずの核種については「検出されない」を環境基準、規制基準とすること。
     環境基準、規制基準の数値については、低減するための見直し検討を常に行うことを法律上明記すること。

    3-06 環境基準、規制基準については、事業の種類によって差別化することなく一律に設定すること。特に再処理施設について特別緩和した基準を定めないこと。

    3-07 土壌汚染については、既存の土壌汚染対処法、農用地土壌汚染防止法の放射性物質適用除外規定を削除すると共に、放射能土壌汚染については、重い罰則をもって規制すること。漏洩企業の除染義務、賠償義務を定め、賠償については賠償保険の加入など賠償資力の保持を義務付けること。

    3-08 自治体の横だし、上乗せ条例による法整備に関する確認規定を設けること。(但し、明文で規定しなくても既存の公害法で認められている)

    3-09 放射性物質の常時監視、公表制度については都道府県知事の法定受託事務とすること。

    3-10 都道府県による放射性物質の管理状況の検査、調査、改善命令に対する権限を定めること。

    4.事故由来放射性物質に関する法整備

    4-01 事故由来放射性物質については、汚染対処特措法に代えて、環境基本法に基づく公害規制法として法整備しなおすこと。この法整備は環境基本法による環境基準、大気汚染防止法及び水質汚濁防止法による規制基準の整備及び土壌汚染関係法の整備による土壌汚染の環境基準・規制基準を前提として行うこと。

    4-02 事故由来放射性物質については、物理的距離的に人の生活圏から遠ざけ、集約し、封じ込めることを原則とし、既存の焼却施設による焼却を禁止し、焼却によらない方法や、焼却する場合には放射性物質のための特別の焼却施設を義務付けること。

    4-03 従来のクリアランスレベルの維持を前提とすること。

    4-04 事故由来廃棄物の処理・処分施設に対しては、立地規制を定め、排出規制は、総量規制を基本として、セシウムについては「検出せず」とすること。また、常時監視システムを採用すること。

    4-05 住民は本来事故前の自然環境を享受する権利を有し、これを侵害されたものであることを前提に、従来の原子力関係法による公衆被曝線量限度年1ミリシーベルトを厳格に守らせること。

    4-06 東京電力の除染義務、賠償義務を明記すること。

    4-07 都道府県知事市町村長に除染命令、廃棄物管理命令の権限を認めること。

    4-08 自治体の横だし、上乗せ条例を明記すること。

    4-09 自治体の除染命令権限、管理命令権限、横だし、上乗せ条例制定権を環境基本法17条の特定地域における「公害防止計画」において生かせるようにすること。

    4-10 住民の汚染事業者、国に対する具体的除染請求権を定めること。

    5.放射性物質の海洋投棄、漏洩の規制

    5-01 放射性物質の陸上施設からの海洋への投棄は、海上構築物施設からの投棄と同様に禁じること。

    5-02 放射性物質の管理義務、漏洩禁止を明確に定め、海洋への漏洩は故意、過失とも重い罰則をもって厳しく規制し実効性を確保すること。

    5-03 放射性物質の海洋への漏洩について漁業関係者、周辺住民への損害賠償制度を整備すること。

    5-04 放射性物質の海洋投棄についての排出基準は再処理施設も原子力発電所の規制と同一基準とし、別途扱いをしないこと。

    損害賠償制度

    6-01 放射性物質による環境汚染は、人格権、財産権に対する権利侵害であることの原則を明示すること。
    6-02 原子力損害賠償に関する法律第3条1項の「ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りではない」を削除するか、又は「地震や津波などの自然災害の程度如何、社会的動乱の程度如何にかかわらず、冷却機能を喪失させ、又は水素爆発によって放射性物質を漏洩させたことによる損害の責めに任ずる。」を加えること。
    6-03 原子力損害賠償に関する法律第4条1項を削除し、製造物責任を明記すること。

    7.刑事法の整備

    7-01 原子力公害法の罰則規定は放射性物質による被害の甚大性、超長期に及ぶ影響、汚染回復の困難性などの特性に応じた厳しい内容にすること。

    7-02 公害犯罪処罰法の「事業活動に伴って」は削除し、放射性物質については、公衆の生命又は身体に「危険を生じさせた者」を「公衆の生命又は身体に危険を生ずるおそれを生じさせた者」とすること。放射性物質の排出に対しては特に罰則を強化すること。

    7-03 放射性物質の漏洩・飛散について刑法を含む刑事法を整備すること。放射性物質の管理者、業務従事者による業務上の漏洩、拡散はいわゆる核テロ防止法に準じた刑罰とすること。漏洩・飛散の過失・重過失の刑事罰を整備すること。

    7-04 放射性物質の漏洩、拡散についての刑事法は、地震や津波などの自然災害程度如何にかかわらず、冷却機能の喪失防止、水素爆発による放射性物質漏洩防止の注意義務があることを明記し、罰則を強化すこと。

    7-05 刑法を含む刑事法の整備に当たっては、放射能汚染の結果財産の使用・利用が制限され、又は公共の施設(公有地、自然公園を含む)の使用・利用が制限された場合の財産毀損罪を設けること。

    8.高レベル放射性廃棄物

    8-01 国会に設置した特別委員会において、現行の特定放射性廃棄物最終処分の前提となった原子力委員会の地層処分行政を全面的に検証すること。

    8-02 原子力委員会の1984年8月7日の原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会の「放射性廃棄物処理処分方策について(中間報告)」が結論付けた「有効な地層の選定(終了)」は撤回すること。

    8-03 地層処分方針を撤回し、特定放射性廃棄物最終処分法は廃止し、長期の暫定保管と処分の研究のための法整備をすること。

    8-04 高レベル放射性廃棄物は既発生分を総量とし新たに増加させないこと。

    9.通報制度

    9-01 原子力に関する、汚染の要因となる危険性に関して、何人にも国に対して通報する権利を認め、これに対して国は、調査し、公表し、対策を講ずる義務を負うこと。

    以上。


    追記:環境基本改正に伴う福島第一原発事故被災者の救済については独立の法整備が必要です。子ども被災者支援法にかかわることなので、第6章として独立した章を設けて、環境基本と関連付け、必要な法整備を説明しました。